紬という言葉は、生地自体の名前にもつかわれますが、着物の格のカテゴリーとして用いたりもします。
簡単にいうと紬というのは、糸を先に染めたあとに布を織る絹織物でかつ、カジュアル用のきもののことです。
染めた糸を織って柄を出した織り着物の紬は、日本各地に伝統工芸品として数多くあり、知れば知るほど奥深いものです。
今回は、ほかのフォーマルきものとは一線を引く、紬着物の特徴などについてご紹介します。
紬ってどういうもの?
紬の織りについて
紬は織りのきものの代表です。糸を作る際にできた節(ふし)と呼ばれる風合いがある織り地が代表的な紬糸です。
布は糸を織って作ります。白い糸を織って白布にし、それを染めて色柄をつけたものを「後染め」といいます。一方、糸そのものを先に染め、それを織ることによって模様を出したものを「先染め」といいます。後で染めるか先に染めるかの違いで、後染めのことを染め、先染めのことを織りと呼びます。
紬は、色染めした絹糸から模様を織り出した生地を用いるので絹の織り着物となります。
紬の歴史
江戸時代のころ各藩は養蚕を奨励しました。上等な糸は納めますが、養蚕農家が出荷できない残ったくず繭を使って家族のために布を織って普段着を作っていました。
こうした歴史があって、紬は庶民の日常着で晴着にならないと昔からいわれてきました。どんなに高価であっても、現代は気軽なお洒落着として、改まった席には着ないしきたりになっています。
紬の生地の特徴
紬といえば、ざっくりとした真綿(まわた)の風合いが魅力です。
紬糸は繭(まゆ)から袋状の真綿を作り、手で紡いで糸にしたものです。繭から直接糸を引き、その糸を精練してセリシンというタンパク質を取り除いて絹糸が出来上がります。
産地によって工程は違いますが、それぞれ一反を織り上げるために、気の遠くなるような手作業が繰り返されます。
全国各地で織られる紬は、繭や糸の紡ぎ方によって風合いが異なり生産地によって違いがあります。大きく2つに分かれ、ざっくりとした肌触りの紬糸で織ったものと、なめらかな肌触りの紬糸を使わない生糸(きいと)で織ったものがあります。
紬糸で織った有名な織物は結城紬(ゆうきつむぎ)です。節感があり、暖かみがあります。
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紬は全国の産地で作られています。茨城県の結城紬や 鹿児島県の大島紬が有名ですが、山形県の置賜紬(おいたまつむぎ)や新潟県の塩沢紬(しおざわつむぎ)、長野県の信州紬(しんしゅうつむぎ)、沖縄県の久米島紬(くめじまつむぎ)など、さまざまな地方で個性豊かな上質の紬を生産しています。
作り手の減少により希少価値が高まり、結城紬などは高価なものがありますが、値段に関係なく基本的にはやはり街着の扱いになります。
紬の模様
紬の模様は縞や格子柄が定番で、1色染めの柄のない色無地もあります。
多彩な柄を出す場合は、糸を部分的に染め分けて柄を組み合わせる絣(かすり)という模様を織り出します。
紬に使われる糸は、自然の植物からとった染料を用いた草木染めのほか、 化学染料で染めたものも使われます。
最近では白生地に織った紬に手描き友禅や型染を施した、後染め紬の訪問着なども作られるようになりました。
基本的に紋はつけませんが、色無地や訪問着の染め紬に、染抜きの一つ紋や縫紋を一つ付けることがあります。紋入りはお茶会にも向いており用途や着て行く場所の幅も広がりを見せています。
紬はさまざまな色味がありますが、淡い色合いより濃い色合いの方がカジュアル感が強くなります。また合わせる帯の色柄によっては華やかな雰囲気にも素朴な印象にもなります。
紬に合わせる帯や小物
織り帯がフォーマルやセミフォーマルの着物に、染め帯はカジュアル着物に向いていますので、紬の着物には染めの名古屋帯がよく合います。半幅帯を着用するなら、紬きものは絹糸ですので半幅帯も絹の帯地のものを使います。
紬は渋めの色合いが多いので、長襦袢や小物類は色味があるのものが相性がいいです。
まとめ
全国の産地で個性豊かな紬が作られ、柄ゆきや帯合わせによっていろいろな着姿を楽しめるのが紬のきものです。
季節に合わせて帯や小物を変えてみたり、自分らしい紬のお洒落を演出してみてはいかがでしょうか!