着物に描かれる動物は想像上の鳳凰や龍、白虎・玄武・朱雀・青龍の四神、そして身近な存在の猫や犬などなど実に多いものです。
描かれ方も作家さんごとにバラエティーに富み、スタイリッシュなもの、思わず笑みがこぼれる愛らしいもの、そして捻りの効いたものと奥深いですよ。
では、さっそく動物の文様を挙げてみましょう。
雀文
雀(すずめ)は昔から「竹に雀」は組み合わせの良いものとされ、また「稲穂に雀」は秋の風物詩とされ、よく題材として尊ばれています。
宇治拾遺物語(うじしゅういものがたり)の「舌切り雀(したきりすずめ)」の童謡にちなみ、またフォルムの愛らしい「ふくら雀」も子供の衣装・持ち物・玩具類にみられます。
福良雀(ふくらすずめ)の江戸小紋もとても人気があり、さりげない可愛らしさを演出することができますね。
仙鶴文
仙鶴(せんかく)は鶴の異称で、あらゆる動物の中で最も長寿とされ、鶴が生まれて600年経つと水ばかり飲み、他の物は一切口にしないとされます。
また2000年後には白い羽が黒色になるといわれ、それ以後数千年の齢を重ねるそうです。
現代の留袖や花嫁衣装、袋帯、その他アンティークの振袖など豪華な衣装によく見られ、その勇ましく優雅な姿は見るものの心を奪います。
孔雀文
孔雀(くじゃく)は熱帯の森林に棲む鳥で、真孔雀(まくじゃく)と印度孔雀(いんどくじゃく)があります。
全身が白い羽毛の白孔雀(しろくじゃく)は印度孔雀の変種であるとされています。
孔雀はその姿や色が大変美しいので、世界中で愛され、神聖視されてきました。
着物の世界では、婚礼用の打掛や小袖、帯などに描かれ、刺繍や染め、織りの技巧を駆使して豪華絢爛に表現されています。
鯉文
鯉(こい)は古くから川魚の長として大切にされ、登竜門(とうりゅうもん)という言葉があるように出世魚として端午の節句に鯉のぼりを飾ります。
鯉の鱗は36枚あることから、六六魚(りくりくぎょ)ともいいます。
名物裂にある「荒磯文(ありそもん)」は波間に踊る鯉を文様としたもので、その調和がとても美しいです。
七五三で男児が着用する羽織やお茶会の着物や帯などでも愛用され、まさに老若男女問わず、幅広く愛される文様といえることでしょう。
兎文
兎(うさぎ)には鯉をモチーフにした「荒磯文(ありそもん)」と同じように、名物裂には兎をモチーフにした「角倉金襴(すみのくらきんらん)」があります。
桃山時代の貿易商である角倉了以(すみのくら りょうい)が明国から持ち帰ったもので、草花の下に兎がしゃがんでいる文様であまりにも美しいため文様そのままの「花兎金襴(はなうさぎきんらん)」でも知られています。
「月は海上に浮かび、兎は波を走る」という謡曲(ようきょく)もあるように、ピンと張った長い耳と足が特徴的な文様も親しまれています。
獅子文
獅子(しし)は「獅子狩文(ししかりもん)」や「獅子奏楽文(ししそうがくもん)」など、その構図は創意工夫に富み、古代より織物や壁画などにも登場します。
獅子狩文はササン・ペルシャ王朝時代の傑作であり、熱帯樹風の大木や更紗、雲、蓮の花などを添えたものもあります。
獅子文より派生した「唐獅子牡丹文(からじしぼたんもん)」は勇壮さと力強さを象徴する獅子と百花の王とされる牡丹を組み合わせたものです。
豪華さの極みとされ、金襴・錦・木綿着物や浴衣などの絵絣・蒔絵・陶磁器・鋳造器・武具など様々に登場します。
おわりに
他にもまだまだ動物文様は続きます。
お楽しみにしていてくださいね!
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