留袖というきものは、着物を始めたばかりのかたにはあまり馴染みがないかもしれませんが、もっとも格の高い正礼装です。
大きく分けて黒留袖と色留袖があり、文様の柄付きは似ていますが、特徴や着る機会など違いがあり、必要なものなどの準備するものも変わってきます。
今回は、留袖のきものを詳しくご紹介していきます!
留袖とはどんなもの?
留袖には黒地の黒留袖と、黒地以外の色地の色留袖の2種類があります。
黒留袖は、既婚女性が着用するもっとも格式が高いとされる第一礼装です。正式な染め抜き日向(ひなた)五つ紋を入れます。
色留袖は、既婚、未婚にかかわらず着用できる礼装で、黒留袖との違いは紋の数によって格付けが変化することです。染め抜き日向五つ紋をつけると黒留袖と同格の正礼装(フォーマル)に、三つ紋、一つ紋と紋の数が減ると準礼装(セミフォーマル)となります。
留袖の共通点
留袖に共通するのが、上半身は無地で裾だけに模様が入る江戸褄模様(えどつまもよう)で、縫い目で模様が途切れない絵羽模様(えばもよう)になっているのが特徴です。
また裏地の裾部分が表地と同じ生地の共八掛(ともはっかけ)がついています。模様の多くはおめでたい意味がある吉祥文様や有職文様、正倉院文様などが描かれます。
留袖には必ず紋を入れます。レンタルの場合は、どの家系でも使える五三の桐や梅などを使用します。
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留袖の歴史
留袖の歴史は江戸時代のころからです。
女性が18歳になったり結婚したりすると、それまで着ていた振袖の長い袖を切って短くしました。この風習を「留袖」といい、これがはじまりとされています。
明治時代はじめは留袖は黒地に限らず、大人の女性が着るきもの全般をさしていました。また、皇室では黒を着ないということですから、色留袖は黒留袖と同じ正式のものでした。
ところがいつのころからか、身内の祝儀や仲人をするときは、黒地の留袖を着る習慣が広まり、やがて黒留袖という名前になり既婚女性の式服になっていきました。これが留袖では黒留袖が第一礼装といわれる所以です。詳しくはわかっておりませんが、西洋文化の黒地のフォーマルが影響ともいわれています。
黒留袖について
黒留袖は既婚女性だけが着ることのできるもっとも格の高いきものです。主に結婚式で新郎新婦の母親や仲人の装いになり、新郎新婦の母親が黒留袖を着用する場合に限り、姉妹や親族も着ることができます。
きものについて
紋は必ず五つ紋を入れ、もっとも正式な染め抜き日向(ひなた)紋を入れます。背中心、両後ろ袖、両胸の5か所に紋をつけます。
比翼(ひよく)をつけて仕立てます。昔は白地の羽二重(はぶたえ)の着物を重ねて着ましたが、現代は着やすいように簡略化され、衿や袖、腰から下の八掛(はっかけ)部分に白羽二重の別布を縫いつける比翼仕立てにし、二枚着ているかのように見せます。
黒留袖はほとんどが一越縮緬(ひとこしちりめん)で仕立てられます。しぼが小さく表面がさらっとして、横に細かなうねがあるのが特徴です。
帯について
留袖には、二重太鼓が結べる織りの袋帯を合わせます。
金地、銀地、白地で、錦織や唐織の重厚感のある袋帯を選びます。
模様は、祝儀用の吉祥文様や有職文様など留袖に調和する格の高い柄がおすすめです。
小物について
留袖の下に着る長襦袢や足袋は必ず白にします。
半衿は白色で塩瀬(しおぜ)の羽二重を使用します。
帯揚げ、帯締めは、フォーマル用の中でも最高格である、白金銀のものを合わせます。これ以外の色を使うことはできません。帯揚げは綸子(りんず)や絞りなどの金糸、銀糸入りの白、帯締めはやや幅広の白が基本です。また地紋や模様は吉祥文様を選びます。
祝儀用の扇子は末広(すえひろ)といい、黒留袖の場合は黒骨を用います。帯の左脇に挿します。儀礼用なのであおぎません。
色留袖について
黒以外の色で地色を染めた留袖を色留袖といいます。
黒留袖と同じように染め抜き日向五つ紋で比翼がついたものは、黒留袖と同格で披露宴はもちろん、結婚式にも用いられます。
黒留袖と異なるところは、色留袖の場合は紋の数を変えられることです。一般的に染め抜き紋を付けますが、五つ紋のほかに三つ紋や一つ紋を付けることができ、準礼装(セミフォーマル)になるので格式のあるお茶会やパーティなど、装う場所が広がります。
五つ紋の場合は、黒留袖と同じように比翼仕立てにしますが、三つ紋や一つ紋なら比翼仕立てにせずに、衿比翼や白系の伊達衿(重ね衿)だけ付けて訪問着風に着ることもあります。薄い色の伊達衿でおしゃれを楽しむことができます。
また、きものの模様も格式のある古典柄の吉祥文様よりも、シンプルな柄付けのモダンなものも使えることができ、色留袖の場合は、生地に決まりはありません。
帯について
黒留袖よりも華やかで、訪問着よりも格があるので、色々な礼装用の帯が合います。
五つ紋の場合は、黒留袖に準じますが、一つ紋にした場合はおしゃれ用の袋帯も着用が可能です。
小物について
五つ紋付きで装う場合には合わせる帯や小物は黒留袖に準じますが、三つ紋や一つ紋の準礼装として装うなら、品のよい淡い色の小物を合わせることもできます。
末広の扇子は、色留袖の場合は黒骨か白骨を用います。
帯留は、宝石や蒔絵など、高級感のあるもので飾ることもあります。ただし、帯や帯締めが豪華なので帯留選びは厳選したほうがよいです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は正装の留袖について種類と特徴をご紹介しました。
人生を重ね、着ることができる留袖。
決まり事がおおいですが、着る機会があればぜひフォーマルの装いを楽しみましょう!