人生の門出を迎える成人式や結婚式などの晴れの日。
正統派の古典文様には格調と幸福な未来への願いが込められているのです。
では、これからさっそくどのような吉祥文様があるのか、ひも解いていきましょう。
熨斗文
熨斗は単に熨とも書き、また熨斗鮑を意味するものです。
昔は鮑(あわび)の肉を薄く長くはいで引き伸ばし、乾燥させたものを儀式用の肴にしたとされます。
その後にはこれを熨斗たたみした紙の間に挟み、引き伸ばしたものを「延寿」のたとえとし、祝い事や進物などの祝儀用の引き出物に添えるものとなりました。
この熨斗を細長く帯状に図案化し、何本かを束ねたものが束ね熨斗という文様です。
熨斗の端正かつ美しい形は着物に気品や躍動感を与えます。
江戸時代の庶民たちの間でもこの縁起の良い文様が好まれ、一時流行したこともあります。
鶴文
鶴は「千年も長生きする白い水鳥」と中国でいわれ、「瑞鳥・仙鶴」とされます。
寿星老人がその仙鶴に乗り、天空より飛び表れて、八仙人手をこまねいて、数々の幸福を迎えたといわれています。
他に類をみないほど、日本全国津々浦々の歴史的な建築物、そして伝統工芸品等に題材として用いられ、今も人々に愛される文様です。
桜文
桜は古くから愛好され、平安時代から宮廷の桜の宴、醍醐寺などの桜会、官女の花合わせ等が催されるなど花といえば桜を意味するほど親しまれてきました。
そして、衣服はもちろんのこと、家具・武具・車興の文様として、意匠をこらして描かれています。
四君子文
梅・菊・蘭・竹の四種類の柄を組み合わせた文様を四君子といいます。
梅は寒さに耐え春一番に率先して花開くことから、菊は気品をもち人の寿を延ぶことから、蘭は「善人は蘭のごとし」といわれるほど王者の香りがあることから、竹は1年を通して緑を保ち、益を受けることからきています。
これからはまず文人墨客に喜ばれましたが、次第に一般化し、ついに全国民に愛されるものとなったものです。
季節の花が組み合わされているので四季を通して着物を着用することができます。
水墨画などの画題や文様などにも多く愛好され、着物では型染めしたものや手描きの友禅を描いたものもあります。
柘榴文
中国では柘榴を子宝の象徴とし、仏手柑と桃と三つで「三多」として喜びます。
日本では鬼子母神の象徴とし、「吉祥果」と呼び、幼児を抱くと共にこれを手にする姿にして、絵画や版画などでもみられるものです。
寿字文
寿は「老いるまでの長い長い年月」を意味して構成された文字とされています。
それゆえ、中国や日本ではこの文字を特に尊び、喜びます。
寿は種々の書体にし、また書体を離れて自由に文様化されています。
丸形の篆書寿字を「団寿字」、長方形を「長寿字」として、また百種そろったものを「百寿字」として、いずれも吉祥の極みとしています。
初日の出文
日の出を拝むことは古今東西通ずる一種の信仰的風習ともいわれます。
特に日本では元旦の日の出が最も吉祥の象徴とされ、早朝から海岸に出て丘から眺めたり、時には富士登山をして金色の太陽を拝むこともあります。
まとめ
吉祥文様シリーズ第一弾、いかがでしたか?
一つ一つが奥深く、本当に素晴らしいですね。人生の門出を迎える際には、引き締まった気持ちでのぞむことができますね。
これからもまだまだご紹介しますので、どうぞお楽しみにしてくださいね。
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