反物とは着物を仕立てる前の状態で、筒状に布を巻いたものを指します。
留袖や振袖、訪問着以外の着物は、円筒の芯に巻かれた反物の状態で販売されており、主に小紋や紬、付け下げ、浴衣など同じ柄の繰り返しになっているきものが反物になっています。
反物の単位や数え方は一反(いったん)と数えます。着物一反は着物一着分に必要な生地を指します。
今回はこの反物とはどういうものか、詳しくご紹介していきます!
反物や仮絵羽とはどんなもの?
反物とは着物一枚分の一反の生地を巻いたもので、反物の幅と長さは一定ではありませんが、通常だと幅9寸5分(約36cm)、長さ3丈(約12m)を目安に織られており、三丈物(さんじょうもの)と呼ばれています。
現代では日本人の身長や体格が大きくなったことから、幅広(はばひろ)と呼ばれる長く広い幅の反物も多く生産されています。
女性用の幅広であるクイーンサイズで幅1尺5分(約40cm)、男性用はキングサイズで幅1尺1寸(約42cm)があります。
着物の反物は、袖(そで)2枚、身頃(みごろ)2枚、衽(おくみ)2枚、衿(えり)1枚、衿の上に掛ける共衿(ともえり)1枚の8枚のパーツに分けられ、裁断され仕立てられます。
反対に留袖や振袖、訪問着は、全体に絵柄を描くために、白生地を一度きものの形に仮仕立てをします。これを仮絵羽(かりえば)といい、仮に仕立てたきものに下絵を描いたら、ほどいて1枚の反物状態に戻します。
反物の仕立てについて
きものには仕立ての違いがあり、袷(あわせ)と単衣(ひとえ)があります。表のきもの地のほか、袷着物の場合は裏地が必要になります。
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袷の仕立て
袷は一般的に2月頃から翌年の5月頃まで着るきものです。
袷のきものを仕立てるには、表地のほかに、裏地となる胴裏(どううら)と八掛(はっかけ)の2種類が必要です。
胴裏とは着物の裏地で、表からは一切見えない部分なため、白い羽二重(はぶたえ)の生地を使用するのが一般的です。
八掛とは裾回し(すそまわし)とも呼ばれる着物の下側部分と、見える部分の先につける裏地です。前と後ろの身頃に4枚、衽に2枚、衿先に2枚、袖口に2枚つけて仕立てます。
八掛は袖口や裾などの着姿からちらりと見える部分ですので、小紋や紬の八掛はきものと同色やぼかし染めを選ぶことが多いですが、反対色や柄物の八掛を合わせる場合もあります。
この2つの裏地は、胴裏は2丈2尺(約8.5m)、八掛は1丈5寸(約4m)の長さで一般的に販売されています。
単衣の仕立て
単衣は6月頃から9月頃まで着る裏地のつかないきもので、反物一反のみで誂えることができます。浴衣反物も同様に裏地を付けずに浴衣を仕立てます。
透け感のある単衣のきものには、背中の縫い代部分につける背伏(せぶせ)や腰の辺りにつける居敷当て(いしきあて)を補強のためにつける場合もあります。
仮絵羽の仕立てについて
小紋や浴衣などとは違い、振袖、留袖、訪問着などの格の高いフォーマルきものは、前から横、後ろにかけて流れるように全体に模様がつながっています。
こういったきものの柄付けを絵羽模様(えばもよう)といい、白生地を袖丈、身丈に裁ち、きものの形に仮仕立てをする仮絵羽にしてから下絵を描き、下絵に沿って友禅染や絞り染めなど、さまざまな技法で模様を施します。
絵羽模様のきものは反物とは違い、ほどかずに仮絵羽仕立ての状態で呉服屋などの店頭に並ぶことが多いです。
反物と同じように仕立ての際には八掛が必要ですが、留袖や訪問着などの礼装用は、表地と同じ布の共八掛(ともはっかけ)をつけるのが一般的です。
八掛には無地や一部に刺繍が施されたもの、模様入りなどもあります。また薄い色の着物は八掛の色が透けるため、ぼかし染めの八掛をつけることもあります。
反物の利点やお手入れ
反物は一枚の布を裁ち、パーツをきものの形に縫い合わせて作られます。各パーツの切り方はすべて直線裁ちなため、縫い目をほどいて元のパーツに縫い合わると、一枚の反物に戻すこができます。
反物の形に戻してからお手入れをすることができるので、染め替えたり裏地の交換、洗い張りや仕立て直しなどをすることができます。
まとめ
プレタの着物や浴衣の専門店が増えている現代では、反物からきものをお誂えする人が減りつつありましたが、自宅でオリジナルの着物や浴衣を作成する方は年々増えてきています。
反物から仕立てると、人とは被らない一点もの、またぴったりと合うきれいなスタイルの着姿になるのでおすすめです。
反物のみなら値段も安くリサイクルショップでも購入できますので、この機会にぜひ作ってみてはいかがでしょうか!