着物の文様にはこれまでご紹介してきたように、吉祥柄や動物など多種多様です。
模様の歴史は古く、描き方によって意味や着こなす季節が変わってきます。
では、今回はさらに珍しく、美しい文様をご紹介してみたいと思います。
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大根(だいこん)
豊穣の秋をテーマにした稲や柿、茄子などの野菜文様もよく見られるものです。
例えば、こちらの大根は春の七草の一つであり、清白(すずしろ)ともいわれます。
お正月に七草粥(ななくさがゆ)を食べるとその年は無病息災(むびょうそくさい)で過ごせることから、吉祥文様の一つとして平安時代から鎌倉時代にかけて、広く普及しました。
また粋な取り合わせとして、大根とおろし金文様があります。
大根は消化が良いことから「食あたりにならない」、「難がない」、そして大根役者をおろすことから「役(厄)をおろす」に繋がります。
大根文は能狂言(のうきょうげん)の装束や家紋などにも用いられます。
栗鼠(りす)
栗鼠が意匠として現れるのは桃山時代で、葡萄(ぶどう)との組み合わせで輸出用の漆器などに使われています。
刺繍や輪奈織(わなおり)を多用してリスを表現した帯が多いです。
蜻蛉(とんぼ)
蜻蛉は「アキズ」という古名があり、古くは弥生時代の銅たくに描かれています。
また「勝虫(かちむし)」などとも呼ばれ、武士に好まれ武具の文様にされました。
矢のほかに、勝負と同音の「菖蒲(しょうぶ)」の柄と取り合わせて意匠とします。
星(ほし)
万物は陰と陽の二元の変化で生成する陰陽説(いんようせつ)と火、水、木、金、土の五元素によって変化する五行説が統合された古代中国の陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)を基に、天文や暦数を占う陰陽道(おんみょうどう)が平安時代盛んになりました。
また、北斗七星を神格化した妙見信仰(みょうけんしんこう)も起こり星の文様化が進みます。
雲(くも)
古来、中国では神仙(しんせん)が住むと考えられた山中からわき出る雲を雲気(うんき)と呼び、その動きや色、形で吉凶を占いました。
平安時代になると霊芝雲(れいしぐも)は、たなびくように横に伸びた形となり、吉兆の意味は薄れていったと言われています。
霞(かすみ)も雲と同様に形が定まらず表すことは難しいですが、絵巻では遠近感や時の推移を暗示するのに使われます。
雪(ゆき)
雪は豊年の兆しとされてきました。
しかし文様になったのは比較的遅く室町時代以降で、草木に雪が降り積もった「雪持ち文(ゆきもちもん)」として桃山時代に能装束(のうしょうぞく)や小袖(こそで)に流行しました。
元禄時代の頃に円形の「雪輪(ゆきわ)」が清涼感のある文様として夏の衣裳に染められます。
江戸時代に雪の結晶が観察されると様々な結晶文様が作られました。
蓬莱山(ほうらいさん)
蓬莱山は中国の伝説上の山で、不老不死の仙人が住み、松竹梅が茂り、空には鶴が舞い、海には亀が遊ぶというめでたい理想郷です。
さらに中国には天地を支える大亀神話が古来よりあり、両者が結びついて大亀が蓬莱山を背負っているという文様があります。
日本では平安時代に漆工芸の意匠に登場し、鎌倉時代から鏡の文様として流行しました。
おわりに
着物ならではの美しい文様を取り上げてみました。
楽しんでいただけましたか?